生命に有効な量:しきい値

見直されるしきい値

約50年前に国際放射線防護委員会(ICRP)は「放射線は微量でも有害であり、DNAは受けた放射線の量に比例して変異する」という説を採用しました。これは放射線量とその影響には生体反応を起こす限界線量である「しきい値」は存在しないとする説でした。

しきい値とは一般に境界線、境目のことを指し、それを境に効果に変化が現れることを示します。放射線にしきい値がないとする説は、放射線は少しでも有害であり、放射線が有効に働く線量はない、従って、効果が変化する境目のしきい値は設定できないとするものでした。

ところが、ラッキー博士は、放射線は低線量であれば、生体を刺激して高い細胞活性効果が認められる。放射線も生体にとって有益な分量であるしきい値があると発表したのです。

しきい値内の低線量放射線であれば、ホルミシス(刺激)効果として、生体にとって有効であると考えられ、多くの放射線学者や医療関係者の注目を集めるようになったのです。

放射線が有効となるしきい値

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A:青い直線は放射線に比例して障害が発生するとする「しきい値なしの直線モデル」。
B:赤い線は低線量であれば、放射線はかえって刺激効果となり健康に寄与するとする「しきい値ありのホルミシスモデル」。
T.D.ラッキー:放射線ホルミシス(2) ソフトサイエンス社(1993年)より 赤い斜線部分はホルミシス効果を示している。
この範囲内であれば、生体にとって有効と考えられる。

 

放射線は少しでも怖いとする説が生まれた理由

放射線実験でDNA修復作用のない細胞が検体として使用された

放射線の影響を調べる初期の実験では、ショウジョウバエの細胞が検体として使用されました。

検体に放射線を当てると、放射線量に比例して染色体異常が認められたのです。これにより「放射線は少しでも危険である」とする説が定説となり、約70年前、マラーの法則としてノーベル賞が与えられました。img_05

ところが近年の研究では、DNAは損傷を受けても自らの修復機能を働かせることが認められるようになってきました。米国原子力安全委員会のマイロン・ホリコープ博士も「DNAは1日に100万件の活性酸素による損傷を受け、それを修復しながら生きている。それが、生命活動である」と結論づけ、DNAの修復活動に関する論文を発表しています。

「放射線は少しでも危険である」とする実験に使用されたのはオスのショウジョウバエの精子の細胞で、生命の中で唯一、DNA修復が行われない特殊な細胞だったのです。

このような流れから、放射線は低線量であれば、刺激効果となりDNAの修復を促すとして低線量放射線の医療への応用が試みられるようになったのです。

放射線ホルミシス国際シンポジウム2007
トーマス.D.ラッキー博士の講演より

放射線ホルミシス効果を提唱したラッキー博士の日本での講演から、その一部をご紹介します。

私たちの生命活動に必要な放射線
ここで問題とされるのは、適正量のことです。どんなものでも有益なものから有害なものへと変る境目の値があり、これを「しきい値」といいますが、このしきい値を見極めなければいけないということです。

放射線ホルミシス国際シンポジウム2007

放射線ホルミシス国際シンポジウム2007

薬の分量と同じように、放射線も毎日の分量が適切であれば、人体に有効な作用をもたらすのです。現在、私たちが日々受けている自然放射線の1千倍、あるいは1千倍以上の放射線を毎日受けたとしても、それが限界値といえるしきい値にはならないといっていいでしょう。

従って、私たち人間は基本的に電離放射線が必要な生物であるということです。その量も現在私たちが自然に受けている20~30倍必要といえます。電離放射線は生物学的には非常に有益な働きをするものとみなされています。このことは既にエビデンス(証拠)として、さまざまなデータが報告されています。

 

放射線の適正量であるしきい値

環境(自然)放射線とその害が現れるしきい値

環境(自然)放射線とその害が現れるしきい値

自然放射線とその害が現れるしきい値の図を見ていただきましょう(図)。大気中にあって誰もが触れている放射線量は、日本では年間約2ミリシーベルト、世界ではだいたい3ミリシーベルトです。現在私たちが得ている2、3千倍くらい、6~8シーベルトがしきい値となります。それくらいになったところでやっと放射線の害となる作用がでてきます。その手前までが私たちの生活環境、健康に生きていくための自然環境となります。しかしながら、しきい値に関してはまだ十分な研究がされていないといえます。

自然放射線量の高い地域での健康への影響
自然放射線の量がもともと高レベルの土地で生活している人たちの健康データが国際的な専門誌に掲載されていますが、たとえば『ニュークリア・ロウ』(2007年)では、自然の放射線レベルが高いところで生活している人たちは、何世代にもわたって非常に健康であるとしています。

たとえばイランのラームサルでは、放射線の照射量が世界レベルの2~100倍も強いのですが、ここではほとんどガンに罹る方がいません。もう1つ、自然放射線が高レベルであるドイツのサクソニー地方ではラドンが400ハイパーキューリー・パー・リッターくらいの濃度が出ています。ここでは、喫煙の習慣が始まる以前は、肺ガンになる方はまったくいなかったといいます。

ただ、しきい値を超えると、放射線はガンの発症と密接な関係が出てくることになり、これは従来言われてきた通りです。放射線が低量であれば、肺ガン死、また肺ガンの罹患率が少ないという結果も得ています。

低線量放射線の恩恵
では、この低量の放射線の影響とは、どういったものが考えられるでしょうか? 動物における実験では分化が早くなり生殖能が高まり、免疫能も上がり、放射線抵抗性も上がりました。神経の鋭敏性が良くなり、そして、低量放射線照射を受けなかったときよりも平均寿命も長くなりました。危害を招くには高量の放射線が必要なのであって、低量の放射線照射には危害がないということになります。

低量の放射線照射によってどのような有益な効果があるでしょうか? 健康のあらゆる分野でベネフィット(恩恵)があるといえます。まず、免疫系等が活性化されます。細胞免疫も科学免疫も上がるわけです。それによって感染症が下がり、すると治癒が早まり、細胞免疫と呼んでいますが、微生物、細菌に対する免疫が上がり、細胞のサイトカイン活性等が良くなり、抗体産生細胞が活性化し、放射線防御の機能が上がることが報告されています。

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秋田玉川温泉  鳥取三朝温泉 坑道・ハイルシュトレン
日本でのホルミシス研究